いきなり"シリーズ"とかついてますが単なるネタ切れ対策なのは内緒。
過去に出会ったストレンジな人達の記録をつけていこうかと画策。
お気に入りな人の日記のパクりとか言うのは禁句。

記念すべき初回は小・中・高と同じ学校だったO原君。

最初に断っておくがこの人物は実在する。

彼は遠山が物心ついて初めて
「キレた人間がキレたついでに行う奇行」
というものを目の当たりにする機会を与えてくれた人物。
すぐキレる子なうえに例えばプールの時間に隣で着替えてた子が
ふと漏らした「O原って鳩胸やなぁ」この一言で何故かブチキレてしまい
教室が血の海になった事がある。しかも小学校で。
単純に鳩胸がコンプレックスなのかと思いきや彼は日ごろから
「俺鳩胸やからなー」等と周囲に自慢げに語っていた。
鳩胸が自慢なのではない。「鳩胸」という単語を知ってるという事を自慢したかっただけなのである。

こんなキレる発火点が読めない上に極度のひねくれ者という非常に扱いにくい人物であったため友達が殆どいなかった。

遠山も本当は近づきたくなかったのだが同じマンションの同じ階
と言う事で親同士が仲良くなってしまい、とばっちりを食うハメになり
嫌々ながら付き合ううちに扱い方を覚えて仲良しに。

そんな小学校高学年の頃、彼が当時発売されたファミコンソフト
「燃えろプロ野球」を手に入れたから遊びに来いと彼から連絡。
新作だったので遠山は喜んで彼の家に向かう。

―ピンポーン
呼び鈴鳴らすと奥から何か声が。
しかし聞こえないのでもう一回鳴らす。

―ピンポーン

………???

―ピンポーン

(ドッドッドッドッド)←足音

ガッショーーーーーーーーーーーーン

いきなり内部からドアを蹴り開く彼。
そして開口一番「開いてんねんからちゃっちゃと入ってこいや!」
自分から呼んどいてこの言い草。
普通ここでこっちがキレて帰るのだが遠山はこれが彼の普段だと知っているので普通に入室。
ちなみにこれは「自分が呼びつけた」という事実を虚勢を張る事で
「俺は別に来て欲しくも無かったけどお前が勝手に来た」
とすりかえる為の行動。

―どないー?おもしろい?
遠山は新作ソフトに興味深々。

「………………」

彼は無視して一人でプレイに没頭。
こう見ると感じの悪いヤツだがこれは彼なりの
「他の事が目に入らんくらい熱中してる=おもしろい」
という事を表すボディランゲージだと言う事だったりする。
人に本心を探られたり読まれたりする事を最も嫌う人なので
こういう事がしょっちゅう起きる。

彼の行動パターンが読めて、ある程度コントロール出来るとはいえ
怒らせると厄介極まりないのでその辺の取り扱いはいつも細心の注意を払っていた。

彼は普段からこういう人なので遠山は彼が遊ぶ画面をぼーっと眺めたり
それに飽きると本棚から漫画出して勝手に読んだりして時間を潰す。
そして普段なら彼が一人プレイに飽きるか適当な区切りが付いたところで
対戦プレイとなるのだけど今日はやたらと長い。

プレイ画面を見るとスコアは0−0で9回裏1アウト1・3塁でCPU側の攻撃。
一打出たらO原の負け。

O原が投げる。

バッターバントの構え。

バットに当たった打球は高く上がり

上がり

 
上がり

 
  
上がり
 
 
 
 
上がり
 
 
 
 

スタンドへと吸いこまれた。

ご存知の方も多いと思いますがこのゲーム、
打者によってはバントでホームランもありうるという鬼のような理不尽設定。

白球がスタンドに入ったその刹那。
O原はコントローラーをファミコン本体に思いきりぶち投げ、
今度はソフトを鷲掴んで引っこ抜きソフトを壁に思いきりぶち投げた。

彼の目はいつぞやか教室を血の海にした時や年上のいじめっ子を
ヘッドロック→体重の乗った執拗な顔面ストンピングで病院送りにした時の獣の目になっていた。
これほどキレた彼は遠山自身もそうそう見た事が無い。
怒りの矛先は完全にソフトに向かっていたが、ここまでキレると
この先の予想がつかない。

景気よく壁にヒットしたソフトはケースが割れて内部の基盤が吹っ飛び、O原の足元へ。
彼はその基盤を掴み、やおら立ち上がってすぐ隣の台所へ。

そして何を思ったのか彼は不可解極まりない行動を取った。
そしてその行動は遠山の人生において5本の指に入る奇行であった。

獣の目のまま蛇口を捻り、スポンジにママレモンを適量出し、よく泡立てたところでその基盤を水洗い。

遠山はこの間呆気に取られて眺めていたがこの光景だけは
いまだに鮮烈に脳裏に残っている。

裏表洗い終わったところで洗剤を水で流し、ピッピッと
水を切り、また一目散にファミコンへと向かい、基盤のまま
乱暴に本体に突き刺して電源を入れなおした。

ガシャッ!

カチッ

……

「ぷれいぼぉー」


ご存知の方もいるかと思いますが「燃えろプロ野球」は
電源を入れると馬場チックな合成音声で「ぷれいぼぉー」と喋る。

今だかつて無い程にキレた彼の表情と全く理解できない行動という緊迫した空気の中

「ぷれいぼぉー」

彼はそれによっぽどうけたのかさっきまでの殺気とはうって変わって
床に身を捩じらせて大爆笑している。

今思えばかなりマヌケな光景だったのだが、当時の遠山は台所での不思議な光景が忘れられず居心地が悪くなり適当に理由をつけて帰宅。
早めに夕飯を済ませてすぐ布団にもぐりこんだ。

それからもう10年以上の月日が流れた。
途中「あいつは怒ると何するか分からん」といわれる人物に
多々遭遇してきたが彼を超える人物はいない。
キレて人を刺す程度なら彼に比べたらぜんぜん屁の河童である。
そんなもんは容易に想像できるし至極真っ当な怒りの行く先に過ぎない。
本当に恐いのはO原のように全く想像のつかない事をやらかす人物だと思う。

O原関係の話は付き合いの長さからエピソードが山のようにある。
この後の彼の話はまた機会があれば改めて紹介しようと思う。

彼の名誉の為に書き添えると
彼がこうなったのは全て彼の複雑な家庭環境の影響である事を付け加えておく。
さすがにそこまでは書けないので割愛するが彼は相当過酷な家庭で育っていた。
そして本当の彼自身はいいやつだった。

そして最後に、
「この男は実在する!」(c)梶原一騎

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